飛騨を巡り、地域の価値を体感し、未来へ届けるヒントを探る。Q0メンバーシップツアー2026

Research#飛騨#メンバーシップツアー

地域で先進的な取り組みを行う企業や創造的なリーダーを訪ね、「継承される地域」をデザインするためのプロセスやアイデアを議論する、Q0メンバーシップツアー。

2026年6月は、飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)の皆さまに現地コーディネート・受け入れのご協力をいただきながら、岐阜県飛騨エリアを訪れました。初日はヒダクマの拠点であるFabCafe Hidaに集合し、地元食材を使ったランチを囲みながらツアーの概要を共有しました。その後、森林資源を起点に、ものづくりや体験、産業創出へと展開してきた実践の現場に触れながら、「地域の価値をいかに体感し、他者に届けるか」を参加者それぞれの視点で考える2日間となりました。

執筆:高畑 陽馬

DAY1:行政の想いに触れ、森林資源と民藝の現場を巡る

飛騨という地域を知る

ツアー初日は、飛騨市役所への訪問からスタートしました。まずは飛騨市の人口動態や産業構造、森林資源をはじめとする地域資源、そして未来に向けたまちづくりの考え方についてレクチャーいただき、参加者は飛騨という地域の全体像への理解を深めました。また、「関係人口」に加えて地域と継続的に関わる人々を捉える「行動人口」という考え方は、地域との新たな関わり方について考えるきっかけとなりました。

ツアーの冒頭で飛騨全体のストーリーを共有いただいたことで、森林や水資源といった地域資源が、その後に訪れる森づくりやものづくり、暮らしの現場へと一本の線でつながり、各地での学びをより立体的に理解することができました。参加者の中には飛騨を初めて訪れるメンバーが多かったため、この全体像の共有が、その後のあらゆる体験を自分ごととして捉えるための大切な見取り図となりました。

飛騨市のまちづくりについてレクチャーをしてくださった飛騨市役所・竹田さん

森林資源から産業をつくる

続いて、ヒダクマの案内のもと、飛騨の木材循環のハブとなる広葉樹流通拠点と、ヒダクマの拠点でもある「森の端オフィス」を訪問しました。

ヒダクマの第二オフィス「森の端オフィス」は、広葉樹の特性を活かした、まるで屋根裏部屋のような建物

飛騨では、森で伐採された広葉樹が集材・製材・乾燥・加工を経て、家具や建築、空間づくりへと活かされるまでのプロセスが地域内でつながっています。全国的にも森林資源を有する地域は数多くありますが、広葉樹を地域資源として一貫して活用する仕組みを構築している事例は非常に希少なのだそうです。

参加者の多くにとって、本格的な木材流通の現場や加工工場を間近で見るのはとても貴重で、目の前で木が加工されていく迫力ある姿に圧倒されながら、地域資源が持つ可能性を肌で実感する時間となりました。

暮らしに宿る豊かさを感じる

その後は、山あいに佇む築150年の古民家を移築・改修した「民藝店やわい屋」を訪問しました。四季折々の自然が広がる風景と、丁寧に手を入れられた建物は、まるで時間がゆっくりと流れているかのような穏やかな空気に包まれています。

「やわい屋」では、民芸の器を中心に新旧の生活道具を販売しています

店内には店主が選び抜いた民藝の器や生活道具が並び、その一つひとつに込められた背景や使い手への想いを伺いました。また、店主の価値観や、日々の生活に寄り添う道具の美しさに、参加者は深く心を動かされました。とりわけ2階の空間では、窓の外に広がる里山の景色を眺めながら、静かで落ち着いた時間を過ごしました。

天井の低い空間が生み出す心地よさも相まって、「いつまでもここで過ごしていたい」と語る参加者の姿も見られ、飛騨の風土と暮らしの豊かさを五感で感じる特別なひとときとなりました。

屋根裏部屋は私設図書館を兼ねているそう

学びを語り合う夜

夕方にはFabCafe Hidaに戻り、ヒダクマより飛騨の森林資源を活かしたこれまでの取り組みについてお話しいただきました。

ツアーの企画にも協力してくれたヒダクマ・井上さんによるプレゼンテーション

森林を「伐って終わり」にするのではなく、川上から川下までをつなぎ、新たな産業や暮らし、広域連携をしながら地域の価値へと結び付けていく実践。同じ林業に携わりながらも従来は分断されがちだった各プロセスや職人たちを丁寧につなぎ、新たな循環を生み出していくヒダクマの取り組みに、多くの参加者が強い関心を寄せていました。 

その後の夕食では、地元の豊かな食材をふんだんに使った料理と飛騨の地酒を囲みながら、昼間の視察で得た気づきや学びについて活発な意見交換が行われました。

「地域資源をどう価値へ転換するのか」「自分たちの仕事に持ち帰れることは何か」といったテーマで議論は夜遅くまで続き、参加者同士の 距離も一気に縮まりました。一日の締めくくりには飛騨の温泉でゆっくりと疲れを癒やし、それぞれが一日を振り返りながら、心地よい余韻とともに初日を終えました。

DAY2(グループA):飛騨の匠と工芸が織りなす世界

一夜明けて2日目の午前中は、2つのグループに分かれ、飛騨の事業者の方々を訪ねました。

人と自然を茶道でつなぐ「風光ル」

グループAでは、飛騨高山の古い町並みにあるコンセプトショップ兼茶室「風光ル」を訪問しました。店内には飛騨産の木材(タモ、栗、イチイなど)や自然素材が用いられ、飛騨の職人技が息づく洗練された空間が広がっています。オーナーの蓑谷百合子さんは「人と自然を茶道でつなぎたい」と語り、茶道具や工芸品を通して飛騨高山の伝統美を発信しています。

2階の茶室では、蓑谷さんのお点前によるお茶とお菓子をいただいたほか、自らお茶を点てる体験も行い、日々の喧騒を忘れるような豊かな時間を過ごしました。

お茶の体験にみな緊張の面持ちです(笑)

暮らしを彩る飛騨のものづくり「遊朴館 HIDA GALLERY」

続いて、近隣のギャラリー&ショップ「遊朴館 HIDA GALLERY」を訪問しました。同施設では、飛騨の老舗家具メーカー・飛騨産業が手がける木工製品をはじめ、人の手と高度な技術によって生み出される工芸品を展示・販売しています。食器や家具など多彩な作品を実際に手に取りながら鑑賞できるほか、店内では家具づくりのワークショップも開催されており、ものづくりの背景や木のある暮らしの魅力を身近に感じることができます。

「風光ル」と「遊朴館」の両施設を通じて、飛騨高山に受け継がれる工芸文化と、その価値を現代の暮らしへとつなぐ取り組みを学ぶ機会となりました。

DAY2(グループB):食の循環と未来を創る教育の現場へ

食が育む地域の循環

一方、グループBがまず訪問したのは、飛騨で持続可能な農業や食のあり方を実践する「サノライス」。あいにくの雨模様でしたが、実際に田んぼへ足を運び、自然の地形を活かした田んぼづくりや、その背景にある考え方についてお話を伺いました。

印象的だったのは、「田んぼはお米を育てるだけの場所ではない」という視点です。生きもののすみかとなる豊かな生態系を育むだけでなく、水を蓄え、土砂災害のリスクを和らげるなど、地域の自然環境を支える多様な役割を担っていることを学びました。食を支える農業が、地域全体の循環や暮らしを支える基盤となっていることに、多くの参加者が深く感銘を受けました。

「問い」から始まる新しい学び

続いて、2026年に飛騨市に開学した4年制大学「CoIU(Co-Innovation University)」を訪問しました。

大学らしからぬデザインだと思ったら、ホテルを改装したキャンパスとのこと

CoIUの大きな特徴は、特定の閉じたキャンパスを持つのではなく、旧料理旅館や古民家、駅前のホテルなどをリノベーションした拠点が街の各所に分散している「まちなかキャンパス」という構想にあります。参加者は実際に街を歩きながら、歴史ある町並みや地域コミュニティと一体化した学びの空間を肌で体感しました。

さながら街全体がキャンパスです

地域や企業と連携し、実践を通して学ぶ教育プログラムについてご紹介いただく中で、なかでも「正解を学ぶ」のではなく、自ら「問いを立てる」ことを重視する教育のあり方は、多くの参加者にとって極めて印象深い学びとなりました。地域のリアルな課題に向き合いながら、新たな価値を共創する人材を育てる挑戦は、これからの教育の可能性や、地域と大学の新しい関わり方を深く考えさせられる有意義な機会となりました。

体験を「ジャーニー」に変え、持続可能な未来へ

ツアーの締めくくりとして、FabCafe Hidaにて「もし飛騨でひとときを過ごすなら?」をテーマにした「体験ジャーニー(ツアープラン)」を考案するワークショップを実施しました。

飛び入りでサノライスさんにもご参加いただき、参加者自身がこの2日間で得たリアルな体験をもとに、「また飛騨を訪れたい」「飛騨の魅力を誰かに伝えたい」と思える理想的な過ごし方をチームごとに構想しました。

単なる訪問者としてではなく、自らが「飛騨の案内人」となった視点で時間の流れを設計し、訪れる人にどのような価値や記憶を届けられるか。付箋や模造紙を囲みながら、参加者は次々とアイデアを書き出し、議論は大いに盛り上がりました。

2日間を通して得た学びや気づきが形となり、飛騨ならではの魅力を活かした、多様で魅力的なジャーニーが数多く生まれました。 ワークショップを見守ったヒダクマの皆さまからは、「都市部の方々から直接アイデアや意見を伺える機会はなかなかない。今後の取り組みの参考にしたい」とのコメントもいただきました。地域を訪れた参加者の視点が、新たな地域の価値創出につながる可能性を感じられる、実りある時間となりました。

おわりに:飛騨から持ち帰ったもの

今回の飛騨ツアーは、豊かな森林資源や食の取り組みから、それを受け継ぐ職人の技、未来の地域を担う教育の現場まで、地域に息づくさまざまな資源が一本のストーリーとしてつながっていることを実感する旅となりました。 個人的には、資源そのものの魅力だけでなく、地域の人々との信頼関係を育み、一度きりの訪問ではなく継続的に関わっていくことの大切さも印象に残っています。また、参加者の方々からは「地域との関わり方を改めて考えるきっかけになった」「来年もぜひ参加したい」といった声を数多く頂き、有意義なツアーとなったことに胸をなでおろしました。

Q0メンバーシップは、単なる視察や交流の場ではなく、地域と継続的な関係性を育み、新たなプロジェクトや共創へとつながるきっかけをつくる場です。今回飛騨で生まれた出会いや学び、そして得られた新たな視点をそれぞれの地域や仕事へ持ち帰りながら、Q0はこれからも地域と都市をつなぎ、持続可能な未来に向けた共創を推進してまいります。

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