ソウゾウをひらく「第1回ソウゾウの大森会議」を開催

Projects#秋田#COI-NEXT#イベントレポート#ソウゾウの森会議

自分らしい生き方を想像し、秋田という風土のなかにおける暮らし方と働き方を創造する人々が集う場として2022年、「ソウゾウの森会議」がスタート。その集大成として、2023年11月24日、あきた芸術劇場ミルハス(秋田市)にて「第1回ソウゾウの森大会議」が開催されました。

当日は、県内の大学生や若手起業家、大学研究者、行政関係者など98名が参加しました。
ソウゾウの森会議の振り返りやゲストのクロストーク、ワールドカフェが行われ、県内外からお越しいただいた多彩なゲストと参加者が交流し、対話の中ででソウゾウがひらかれました。

冒頭では、福田裕穂 秋田県立大学学長と神部秀行 秋田県副知事から開会挨拶がありました。
秋田県立大学、国際教養大学、秋田公立美術大学、株式会社Q0の連携協力プロジェクトである共創の場支援プログラム(COI-NEXT)「技術x教養xデザインで拓く森林資源活用による次世代に向けた価値創造共創拠点」の総括として、今後の秋田の地域社会の発展に向けどのようにソウゾウしていくのかという議論や、強力なアクションへの期待が寄せられました。

福田裕穂 秋田県立大学学長
神部秀行 秋田県副知事

クロストーク第一部:これまでの「ソウゾウの森会議」

【モデレーター】
林千晶(株式会社Q0 代表取締役社長)

【ゲスト:ソウゾウの森会議】
湊哲一(ミナトファニチャー・のしろ家守舎)
盛光瑠衣(雑草料理人)
永沢碧衣(絵画作家)
渡邊強((株)上の山牧場)
大西克直(秋田里山デザイン・さとやまコーヒー)

ソウゾウの森会議全11回のグラフィック
クロストーク第一部の光景

)能代市、美郷町、にかほ市、湯沢市、男鹿市をそれぞれ巡るソウゾウの森会議では、主催も起業の一部だという想いからホストの皆さんに役割をお願いしましたが、実際にやってみてどうでしたか?

)能代は、昔は東洋一と称されるほど木材産業が盛んな街「木都」であったことの再確認に加えて、産業が成熟し過ぎたが上に分業化が進み、互いの仕事への理解が乏しくなっていた現状にも気づきました。地域の高校生、大学生から社会人、高齢者と幅広い方が集まり、様々な話が飛び交う中で、「ここが木都だね」という一言が印象的でした。

)新しい木都としてチカラを出すにはどういう視点が大事だと思いますか?

)川上から川下まで全ての流れを知っている、つなぐ役割が出来る人が必要です。森と人と街の想いの共有による新しいつながりの価値をつくれる人材育成が重要です。

)美郷町でやってみてどうでしたか?

盛光)美郷町では、街歩きと会議の2部構成で行いました。街の方に声かけしたところ、商店の方がお祭り風にアレンジしたり、バスの運転手さんがガイドを始めたり、と想像の及ばない面白い展開がありました。美郷町の観光は、ラベンダー園など郊外が多くて街中に多くの人が集まるイメージは無かったのですが、今回のイベントで「まちのみんなで集まって外から来る方をおもてなしすること」という人がくるイメージを初めて持てたことがとても良かったです。

)にかほのソウゾウの森会議は牛に魚にとたいへんユニークでしたね。

渡邊)にかほは鳥海山と海がとても近いという特徴があるので、海やまちで活躍されている人たちに会って、漁港やまちを歩き、ゲストハウス、放牧場の見学を行いました。

)漁業と牧畜業、旅館、まちなかでの起業などそれぞれが同時に起こるにかほはどんなまちだと思いますか?

渡邊)おいしい魚が捕れるのは、山が豊かなまちだからだと思います。森で育まれた水や蓄積された養分の重要性は広く知られているためです。それぞれが点でなく、役割をはたしてつながっていることが重要です。

)森と川の密接な関係というと湯沢ですね。

永沢)当日は、森と川のつながりを感じる題材の一つとしてイワナに着目しました。原流域の自然の体験や漁協の方々との交流をフィールドワークし、湯沢市が舞台の一つになった「ミルクの中のイワナ」というドキュメンタリー映画を鑑賞し、ソウゾウの森会議に臨みました。

)湯沢の会場は、秋田市から電車で2時間くらいかけた先だったので「人が集まるかな?」と思っていたら参加者がとても多くて驚いて、制約条件とクリエイティブの関係に思い当たりましたが、どのような会議になりましたか?

永沢)当日はイワナを取り巻く環境は、制約のある極限環境でそこに生存戦略やエコシステムが存在していることを知り、自分たちの環境に置き換えたらどうなるだろうという気づきを考える時間になりました。また、その想いを未来にどう託すのか?自分だけでなく周りを考えて何が出来るのか?ということを考える場になったとも思います。

)男鹿は、参加者から「感動した」というメッセージが多かったのが印象ですが、当日はどうでしたか?

大西)男鹿は他の地域の方から「熱いよね」と言われることは実感していますが、人口減少や担い手不足は他の地域と同じように直面しており、強く課題に感じています。今回は、JR男鹿駅の街ブラと郊外の農場でフィールドワークし、それぞれで活躍する熱い人たちと交流しました。

)地域の多彩な取組と想いがよく分かりますね。主催者の皆さんは、今回学んだことや今後やりたいことは何ですか?

大西)地域の一人のプレイヤーとしての意識が更に高まりました。地域の一員としてしっかり価値を出していける、里山コーヒーを男鹿で広めることに努めたいと思います。

渡邊)今回は道路事情により皆さんに本当に見ていただきたい放牧場がご覧いただけませんでした。数十人来ても案内できるような環境づくりをがんばっていきたいと思います。

永沢)今までお世話になっていた湯沢のまちの方々とも、もっと考えや想いを共有したり深めたりすることが出来る手応えを掴むことができました。地域の内外の関係性を産む場を創っていきたいです。

盛光)美郷町で四季を過ごしているので、美郷町を訪れる方々をもてなしていきたいです。

)木都らしいまちづくりに、今まで伝え手がいなかった森の循環や白神山地のストーリーを組み込んで、新しいスタイルでモクトサイコウに取り組みたいです。

)皆さんの話を聞くと、事の大小に関係なく自分としてやりたいという気持ちと行動が大事だと思います。参加者の皆さんもぜひ自分のソウゾウに前向きになってくださいね。

クロストーク第二部

【モデレーター】
林千晶(株式会社Q0 代表取締役社長)
工藤尚悟(国際教養大学 准教授)

【クロストークゲスト+ワールドカフェ】
神武直彦(慶應義塾大学 教授)
林要(GROOVE X株式会社 代表取締役)
奥森清喜(株式会社日建設計 取締役 常務執行役員)
丑田香澄(一般社団法人ドチャベンチャーズ 事務局)
寺田耕也(株式会社Local Power 代表取締役社長)
土井雄介(株式会社ユニッジ Co-CEO)
林厚見(株式会社スピーク 共同代表)
林信之(フリーランスジャーナリスト)
高橋希(ユカリロ編集部)
三谷葵(ユカリロ編集部)
工藤淳也(丸善ジュンク堂書店 経営企画部部長)
下村今日子(カルチャー・ヴィジョン・ジャパン 顧問)
内山博文(u.company株式会社 代表取締役)
三冨章恵(アーツセンターあきた 事務局長)

クロストーク第二部では、「まち、データ、ロボットで生みだす未来」「地域起業家を100人つくるためには」「地方で生まれる新しい暮らし」「私たちのまちをつくるとしたらどんなまち?」の4つのテーマを題材に、14名のサポーターが4台のテーブルに分かれ、クロストークとワールドカフェが催されました。
最初に、クロストークのゲストの皆様から一言を頂戴しました(奥森氏は後ほど合流)。

神武)第一部のお話を聞いて、秋田は魅力がいっぱいあるけど未だ知られていないことがあることをよく分かりました。私の専門は宇宙開発ですがデータを活用して知ってもらうこと、地域を活性化する行動に繋がることにつなげられればと思います。

林要)LOVOTという家族型ロボットをつくっています。3年以上愛用される方がほとんどの中で、LOVOTを見ただけで分かった気になる方が多いことに気づきました。これは、秋田でも同じなのではないかと思います。実際に触れてみて、生活してみて、伝わることの大切さはロボットの文化づくりとの共通性を感じています。

寺田さん、丑田さん、林要さん、神武さん

丑田)五城目町で地域に根ざした挑戦をしています。今回は、秋田県内外から多くの人が集まっておりますので、ふだん取り組んでいるエコシステムづくりの枠を越えた議論が出来ることが楽しみです。

寺田)秋田でビジネスすることのやりにくさは感じていません。プレイヤーが少ない地域ですので、ぜひ皆さんにプレイヤーになっていただければと思います。

土井)大企業の新規事業とスタートアップをつなぐ社内新規事業の支援に取り組んでいます。私自身、企業に属しながら起業し、企業や地域の枠を越えて活動できています。何も無いところから企業を立ち上げていくことを共有できればと思っています。

林厚見)建物のリノベーションに携わっています。ずっと東京で仕事しているのですが、ここ5年10年は地方に嫉妬を感じて活きている感覚です。秋田にも縁があるので少しずつ繫がりを作っていけると嬉しいです。

林信之)テクノロジー偏重ではなく、自然との関係性も含めた社会の捉え方をみんなで考えていくことに意識がいく中で、木材が空港や駅舎に上手に活用されている秋田に気付けて良かったです。秋田にポテンシャルを感じています。

高橋さん、三谷さん、林信之さん、林厚見さん、土井さん

三谷葵・高橋希)ソウゾウの森会議に参加する中で、秋田に普通に暮らしている人たちが普通に起業していく世の中になればいいなと思うようになりました。起業にはいろいろな形があることを学んでいけたらいいなと思います。

工藤淳也)秋田は課題先進県ですが、出版業界も課題先進業界です。課題を先に捉えられている点をチャンスと思い活路を見出す点は共通していると思いますので、議論を楽しみにしています。

下村)人材育成に関わっています。面白いまちは面白い人がつくる、それでは面白い人をどうつくるのか、ということをポイントにお話できればと思います。

内山)リノベーションや空き家再生などストック社会の中での悩みや課題をもつ企業支援や自らの活動をしています。地方での取組が多い中で東北での縁もありますので、幅広くお声かけいただけると嬉しいです。

三冨)秋田公立美術大学と地域をつないで事業を立ち上げる仕事や秋田市文化創造館の立ち上げから運営に関わってきました。人と人をつないで事業にする仕事をしているので、今日もいろいろなつなぎで貢献できればと思います。

下村さん、工藤さん
三冨さん、内山さん

小ホールA:ゲストトーク+ワールドカフェ

トーク1「まち、データ、ロボットで生みだす未来
モデレーター:
林千晶(株式会社Q0 代表取締役社長)
サポーター:
神武直彦(慶應義塾大学 教授)
林要(GROOVE X株式会社 代表取締役)
奥森清喜(株式会社日建設計 取締役 常務執行役員)

クロストーク第二部の林千晶さんと神武さん
神武さんのテーブル
奥森さんのテーブル
林要さんのテーブル
林要さんのお話を聞くLOVOT

トーク2「地域起業家を100人つくるためには」
モデレーター:
林千晶(株式会社Q0 代表取締役社長)
サポーター:
丑田香澄(一般社団法人ドチャベンチャーズ 事務局)
寺田耕也(株式会社Local Power 代表取締役社長)
土井雄介(株式会社ユニッジ Co-CEO)

林千晶)東京にいると「秋田で起業するのは難しそう」と思うのですが「実はすごくやりやすいよ」というのはどういう観点でしょうか?

寺田)例えば、子供たちが思いっきりボールを蹴れる場所が欲しいと思って体育館を作りました。東京だったらフットサル場を一生懸命探していたと思います。地方のビジネスも、自由にとりあえず試しにやってしまえが出来ることに気づいてもらうと動き拡がるはずです。

林千晶)子供がボールを思いきり蹴れる場所づくりで、東京だと諦めて秋田で出来た一番の理由は土地の広さ、ゆとりですか?

寺田)重要な点は、人のつながりだと思います。「こういうことやりたいから倉庫とか知らない?」と言うと、「○○さんのところ空いてるよ」「床材は秋田で良いメーカーを知っているよ」などがつながってプロジェクトが出来上がるのです。人が足りない場合も県外のつながりから県内業者につながることもできるのでいろいろなプロジェクトが作れます。

林千晶)今、秋田で新しいことをやるときに地域のプレイヤーがすぐに見つかる、あるいは、見えているという状況があります。
一方で、東京は人がたくさん居すぎます。土井さんはメリットとデメリットはどのように感じますか?

土井)東京のメリットは、やはり人がたくさんいるので、何かしようと思えば必ず誰かがつかまるという点です。ただ、それが濃いつながりであるという断言が難しいことと、アクション自体がたくさんあって目立たないのがデメリットです。私も愛知にいくと、トヨタ自動車に勤めながら、起業して、地域を支援してというユニークな存在です。地域に根ざして、自分らしさを追究している人たちは見分けがつきやすいし、地域No.1系の人たちは当然他の地域のつながりが強いので、強固なチームになるのだと思います。

林千晶)秋田でも起業の可能性を強く感じますが、一方で女性の視点を含めて丑田さんはどう思いますか?

丑田)起業の目線では、私自身が東京にいた時代に自分の子供が産まれるタイミングで子育て環境をより良くしていきたい想いで、東京で地域とつながりの薄いお母さんたちをサポートする仕組みをつくりました。東京では子育て分野に取り組んだら子育ての専門知識をもった人ばかりとつながったのですが、秋田にUターンしたら分野を問わずに地域でフラグを立てている人たちとつながったのが全然違う情報交換などが出来てとても面白いです。女性の目線では、私が秋田に戻ってきた10年前は、特別なITスキルがあったり、私みたいにUターンしたりという立場じゃないと女性の起業は難しいのではないかと声をよく聞きました。しかし、この10年間で寺田さんみたいに会社と別軸で体育館を作っちゃえとか、田舎に来たからハウスを建てちゃえとか、キックボクシングを続けてきたから公民館でやってみよう、とか事業づくりではなく、暮らしづくりで楽しんでいる人たちを見た女性たちが「起業は無理だけど自分のやりたいことぐらいはやれるかも」とイベントの主催から始めるなど行動し始めています。

土井)私自身、入社して仲間と開いた飲み会のようなささやかな勉強会が起業のきっかけだったのでよく分かります。愛知の豊田にはそれが無かったということを考えると地域には可能性がいっぱいあると思います。

寺田)女性は出産・子育て期のライフステージがある故にライフステージで仕事のフルパワーを活用できないのがもったいないと思います。介護を含めると、男性も女性も関係ないので、お互い様で働ける環境づくりを配慮しています。

林千晶)会計士や社長など社会で光のあたっている部分はその人の三日月の部分で、満月で見てみると他にも、話を聞くのが得意だったり、笑顔で誰でも応援できるだったりといった素敵なスキルがあるかもしれません。男性が光の当たったスキルの部分で起業している点が多いなかで、女性には満月でみたときのスキルがあることを教えてあげることが日本にものすごく大切かなと思います。

丑田)すごくそう思います。私が立ち上げた子育てサポートでも「子育てしかやってないから」と言った方が赤ちゃんの抱っこやお母さんへの寄り添いも上手で、何も持っていないと思って過ごした時間がキャリアになって職業に就いた方も結構居られます。五城目でも、親の困り事の解決や暮らしのなかで出来るかもしれないと思った優しさやエネルギーからうまれるクリエイティビティの強まりを感じています。

丑田さんのテーブル
寺田さんのテーブル

小ホールB:ゲストトーク+ワールドカフェ

トーク3「地方で生まれる新しい暮らし」
モデレーター:
工藤尚悟(国際教養大学 准教授)
サポーター:
林厚見(株式会社スピーク 共同代表)
林信之(フリーランスジャーナリスト)
高橋希(ユカリロ編集部)
三谷葵(ユカリロ編集部)

工藤尚)大会議の冒頭から、秋田は課題先進県だとか来てもらわないと良さがわからないという語り方がありました。私はソウゾウの森会議は課題ベースではなく、みんなの想像力を活かしたアイデアベースや暮らし方ベースで考えていこうという場だと思っています。今回のクロストークでは秋田県外と県内をベースに活躍されている方に登壇いただいていますので、地方の暮らしの魅力や可能性についてお尋ねしたいです。皆さんには地方はどう見えていますか?

林厚見)先ほどの自己紹介で「地方が羨ましい」と言いましたが、地方が活き活きしているように見えているからです。「東京では欲しいものが手に入る。けれど、欲しいことじゃなくてやりたいことをやるなら、クリエーションしたいなら地方だ」と思っています。例えば、地域に移住した人に「何でここを選んだのですか?」と問いかけたとき、何らかの思想を期待するのですが「なんとなく幸せだから」みたいな回答が返ってくるときがあります。そのように地方でごきげんに暮らす人たちを見ていると、都市型進化とは違う未来を感じていることを掘り下げて考えてみたいです。

林信行)海外の友達が日本に来て僕の知らないような田舎や伝統工芸を訪れていることから実感するように、今、日本のいろいろな地域に世界中の人が訪れています。地方はポテンシャルがあるなと感じています。新幹線が各所で開通して便利になっていますが、プチ東京化やプチ福岡化などが進んだら魅力がなくなってしまうのではないかと思います。どんどん画一化する世の中で、街のアイデンティティがあることは非常に大事だと思います。東日本大震災が一つのきっかけになったと思いますが、IターンやUターンの人ほどその地域の魅力に気づくのですよね。Iターンのような全然関係ない外からの人間が「これ実はすごいことですよ」と地域の中に知らせることと、Uターンのような地域から出た人が外から見て初めて暮らしてきた地域の輪郭、すなわちアイデンティティに気づくということ、両方の関係を養う意識づくりが期待されます。

工藤尚)アイデンティティに気づくには、やはり内側と外側が出会うというのは大事なことの一つですね。

高橋・三谷)高橋はUターンで三谷はIターンというコンビのユカリロ編集部です。昔は仕事があるところに住んでいて、今は暮らしをベースに仕事をつくることが出来る時代になってきたと思います。例えば、地域の人や自然文化を活かした事業として、農業や味噌造り、郷土芸能といった地域文化の体験の提供が挙げられます。地方の暮らしのなかであなたはどうしたいのですか?というのを若い人たちに伝えたいです。

工藤尚)暮らし方から働き方を考えるというのはソウゾウの森会議の最初の問いかけでもありましたので、お話しがきけて良かったです。

林厚見さんのテーブル
林信之さんのテーブル
高橋さん・三谷さんのテーブル

トーク4「私たちのまちをつくるとしたらどんなまち?」
モデレーター:
工藤尚悟(国際教養大学 准教授)
サポーター:
工藤淳也(丸善ジュンク堂書店 経営企画部部長)
下村今日子(カルチャー・ヴィジョン・ジャパン 顧問)
三冨章恵(アーツセンターあきた 事務局長)
内山博文(u.company株式会社 代表取締役)

工藤尚)テーマは「私たちのまちをつくるとしたらどんなまち?」です。秋田に限らず全国でまちづくりが進んでいます。私は市町村単位の印象が強いまちづくりよりも、農山村の地域コミュニティをイメージした地域づくりという言葉を使っています。地域では、特に人口減少が最大の関心事で人口が減っていく中で空洞化するまちの空間活用を目的にしたリノベーションが重視されています。私はもっと大事なことは地域が小さくなっていくときに何を残していくか、最後に残したいのは何なのかだと思っています。まちづくりを語るときは、コンパクト、インクルーシブ、レジリエンスなど横文字ばかり並ぶのでかみ砕いた話をしたいと思います。
皆さんにどういう価値観をベースにまちを作るべきかとお尋ねします。

内山)私は2035年まで人口増加するつくば市、人口減に困っていない課題後進地域でまちづくり会社の代表をやっていることが今の話につながるのではと思いました。先行するニュータウンで困っているように、分譲地が大量に出来て子供が増えて、10年後には不要になるくらい多くの学校が必要になって行政コストばかりかかる町になることはつくば市も分かっています。けれど、政治家や自治体は全方位でみんなが幸せになるマスタープランを描かざるを得ないんです。一方で私たち民間のまちづくり会社は、政治家や行政では難しい、特定の課題に対する明確なコンセプトとターゲットで活動できる役割を担っています。明確な目的があるからこそ巻き込まれる人や共感できる人が増えて関係人口の増加につながるので、コンセプトはとても大事だと思います。

工藤尚)行政側が全方位的に見なければいけない中での役割という点が、大学の研究者との共通性を感じました。秋田の中にいる三冨さんはいかがですか?

三冨)多様性やダイバーシティーをもう一歩踏み込んだ、自分自身がその多様性を構成する重要な要素であることに一人一人が気づいていることが大切にしたい価値観の軸だと思います。途上国支援に関わる仕事をする中で、支援側の幸せの形を途上国に押しつけるような支援の形に疑問を感じて、互いの価値観や文化の相互理解をつなぐツールとしてのアートは何が出来るのかということに至りました。秋田市文化創造館での仕事を通じて、一人一人がまちをつくることに寄り添う力をフォローできればと思っています。

クロストーク

工藤尚)まちというのは行政がつくって与えるものではない、という構造は先進国と途上国の国際協力で乗り越える課題と同じです。与えるをどう乗り越えるかには、ダイバーシティーがキーワードになるのではないでしょうか。

下村)子供が幸せに過ごせるまちが、私たちがつくるべきまちです。一人一人の持って生まれた才能を見出して社会に貢献できる教育が充実し、将来就きたい職業ごとに学ぶことができる仕組みがあればいいのですが、海外では実現していても日本にはまだ一つもありません。山村教育(自然環境や地域に親しむ仕組み)はありますが、その枠に留まらない大学と地域で働く人がつながった新しい教育が秋田で発信されれば応援したいと思います。

工藤尚)少子高齢化が全国一進んでいる秋田は、子供一人あたりの大人が全国一多いということでもあり、新しい教育を具体化するリソースに溢れていそうです。

工藤淳)私は田舎育ちで中学1年から東京に出てきて以来、ずっと地方に憧れを持っているなと思います。書籍とインターネットの違いは情報のスピード感です。ネットは大量の情報にずっと追いかけられるスピード感がある一方で、書籍は深くて遅い感じがあります。書籍の魅力は、自分の時間を取り戻せている感じがする点ですが、地方にもとても似た想いを感じています。また、災害の度に書店の来客数が増える傾向があり、地域に残すべきインフラとしてどのように循環した仕組みをつくるべきかというテーマを持っています。まちづくりに関しては公共の「」が指すコミュニティや人のつながりに関心があるので、皆さんとお話しできればと思います。

内山氏のテーブル
下村氏のテーブル

ソウゾウの木:活動目標

参加者が木の葉形のカードに今年来年にチャレンジしたいことを活動目標というかたちで記入し、会場に設けたソウゾウの木に掲示しました。

参加者の活動目標で育つソウゾウの木
休憩時の風景
休憩時の風景

クロストーク第三部:COI-NEXTのビジョン

【モデレーター】
林千晶(株式会社Q0 代表取締役社長)

【クロストークゲスト】
足立幸司(秋田県立大学 准教授)
工藤尚悟(国際教養大学 准教授)
小杉栄次郎(秋田公立美術大学 教授)

COI-NEXT事業で3つの大学とQ0で議論して、見出した地域拠点ビジョンが発表されました。
森の価値変換を通じた、自律した豊かさの実現
です。私たちは森から、木材生産だけではなく水や動物、山野草などの資源のほかに、レクリエーションや芸能文化、土砂災害防止、炭素固定など多様な恩恵を受けています。
これら多様な恩恵が時代に応じて価値を生み、変換させてきた中で、サステイナビリティやウェルビーイングという豊かな暮らしと社会を目指す私たち地域社会に活かすこれからにおいて、価値変換は重要な位置にあり続けます。
技術に特化した秋田県立大学、価値の言語化や相対化を導く国際教養大学、それらのニーズを読み解いてまちづくりやものづくりのデザインやアートワークを担う秋田公立美術大学、それぞれの強みを活かし、弱みをカバーする三大学の連携がクロストークで語られました。

フィナーレ

ご参加された皆様が互いを知り、つながりが増えていくソウゾウの森大会議の場であったことを願います。
10年つづくプログラムになることを祈念して、次の機会にお会いできることを楽しみにいたします。

みんなで記念撮影!
第1回ソウゾウの森大会議 開催概要
  • テーマ
    • ソウゾウをひらく
  • 開催日時
    • 2023年11月24日(金)13:30~17:30
  • 開催場所
    • 秋田市・あきた芸術劇場ミルハス 小ホールA・B
  • 参加者
    • 98名
  • モデレーター
    • 林千晶(株式会社Q0 代表取締役社長)
    • 工藤尚悟(国際教養大学 准教授)
  • クロストークゲスト:ソウゾウの森会議
    • 大西克直(秋田里山デザイン・さとやまコーヒー)
    • 永沢碧衣(絵画作家)
    • 湊哲一(ミナトファニチャー・のしろ家守舎)
    • 盛光瑠衣(雑草料理人)
    • 渡邊強(株式会社上の山牧場)
  • クロストークゲスト+ワールドカフェ
    • 神武直彦(慶應義塾大学 教授)
    • 林要(GROOVE X株式会社 代表取締役)
    • 奥森清喜(株式会社日建設計 取締役 常務執行役員)
    • 丑田香澄(一般社団法人ドチャベンチャーズ 事務局)
    • 寺田耕也(株式会社Local Power 代表取締役社長)
    • 土井雄介(株式会社ユニッジ Co-CEO)
    • 林厚見(株式会社スピーク 共同代表)
    • 林信之(フリーランスジャーナリスト)
    • 高橋希(ユカリロ編集部)
    • 三谷葵(ユカリロ編集部)
    • 工藤淳也(丸善ジュンク堂書店 経営企画部部長)
    • 下村今日子(カルチャー・ヴィジョン・ジャパン 顧問)
    • 三冨章恵(アーツセンターあきた 事務局長)
    • 内山博文(u.company株式会社 代表取締役)
  • 司会
    • 池田友葉(株式会社Q0)
    • 山本美雪子(株式会社See visions)
  • 企画・運営協力
    • 東海林諭宣(株式会社See visions)
  • 写真提供
    • 今中隆介(秋田公立美術大学 教授)
  • 主催
    • COI-NEXT「技術x教養xデザインで拓く森林資源活用による次世代に向けた価値創造共創拠点」
    • 代表機関:秋田県立大学
    • 幹事機関:国際教養大学、秋田公立美術大学、株式会社Q0

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